9/5 『リアルは進化する―検証!F/Tラインナップ』(スピーカー:相馬千秋、松井周、聞き手:佐々木敦)

9/5 自由学園明日館にて。


この日はダブルヘッダー。横浜から一路池袋へ。


聞き手に批評家の佐々木敦、ゲストにサンプル主宰の松井周(劇作家・演出家・俳優)を迎えて、プログラムディレクターの相馬千秋が春よりもパワーアップしたF/T09秋のラインナップを解説した。


演目を選んだ人(この場合はプログラムディレクター)がそれについて事前に話すというのは、「ヨーロッパの公共劇場では行われていること」と書くと「ヨーロッパかぶれめ!」と思われることもあるかもしれないが、「選んだ人間がその理由・見どころを説明する」というのは、別に不思議なことではないし、劇場等でもっと普通に行われるべきことである。


そんなお題目はさておき、粒ぞろいのF/T09秋の演目の中でも筆者なりに「特に注目すべき」と思う作品を三つ挙げることにする。


①『神曲』三部作(地獄篇煉獄篇天国篇)(演出:ロメオ・カステルッチ)


なんと言ってもロメオ・カステルッチの『神曲』三部作である。春に来た『Hey Girl!』は、視覚的・聴覚的な「美しさ」は十分に発揮されていたものの「小品」であるという印象は拭えなかったが、今回はまさに「大作」といった趣である。


ネタばれになってしまうけれども、地獄篇の映像(アヴィニョン演劇祭)がYoutubeにあったので貼り付けます。



②『Cargo Tokyo-Yokohama』(構成:シュテファン・ケーギ(リミニ・プロトコル)、演出:イェルク・カレンバウアー)


08年の『ムネモパーク』、09年の『資本論』に引き続き、リミニ・プロトコル三度目の来日! 改造したトラックのコンテナ部分(客席になっている)に乗り込んで、「荷物目線」で街を移動する作品。


筆者は、07年のアヴィニョン演劇祭でこの作品のオリジナルともいえる『Cargo Sofia-X』(Xには開催地の都市名が入る。筆者が体験したのは『Cargo Sofia-Avignon』)を体験したのだが、ブルガリアの首都ソフィアから開催地までのEU規模の物流の流れと、開催都市内の物流の流れがオーバーラップする仕掛け(時折、コンテナ内にスクリーンが降りてきて、観客はスクリーンに投影されるソフィア〜アヴィニョン間物流拠点の風景と現実のアヴィニョンの物流拠点の風景を交互に見ることになる)が素晴らしかった。


今回は「東京―横浜」バージョンということで、どういうアレンジが加えられるのか楽しみである。


で、こちらも過去の公演の映像が見られます。



ただ、トラックの規格の問題等のせいで公演日時がまだ決定してない点だけが不安である…。これはF/Tのサイトを定期的にチェックしなくては。


③『H3』(演出・振付:ブルーノ・ベルトラオ)


三つ目はダンス。ブラジルのダンスカンパニーということで、これまでまったく知らなかったのだが、「ヒップホップをコンテンポラリーに組み入れる」というここ10年くらいのコンテンポラリーダンス界の「課題」を解決したとも言えるよう。映像で見てもすごい。



とまあ三つ挙げてきたが、このほかにも四度目の来日となるラビア・ムルエ、「パンチラ」がテーマ(笑)というタニノクロウなど注目の作品が盛りだくさんである。