9/23 『Singular Sensation』(コンセプト・演出・振付:ヤスミン・ゴデール)

9/23, 24 青山円形劇場にて。


ダンス・トリエンナーレ・トーキョー三作品目。三年ぶり三度目の来日のヤスミン・ゴデールの作品。やっぱり素晴らしかった。


(筆者が見た限りでの)ヤスミンの作品の素晴らしいところは、人間の脆さ・ひ弱さと獰猛さが同居していることである。そして、ダンサーはどこか寂しげで弱そうな「ヒト」と、獰猛で狂ったような動きを見せる「未知の生物」との間を行き来する。そして舞台上に走る緊張感。


ヤスミンのカンパニーのダンサーの素晴らしい点の一つは、表情である。しばしばダンスではヘンに表情が入ると興ざめしてしまうところがあるが、このカンパニーのダンサーは、表情に間違いがない。目つき一つで「人間ではない存在」になるのである。そして身体をねじるような動き。すっかり動きに飲み込まれてしまった。


筆者が最初に見たヤスミンの作品は、06年に東京国際芸術祭(現フェスティバル/トーキョー)で来日した『ストロベリークリームと火薬』である。「死への恐怖」と、その反動と言える刹那的な「生の快楽」を表象する身体に大きなショックを受けたのだが、今作では、より舞台上で示されるものが、より抽象的になっていた気がする。と言っても、「抽象的な身体」というものはどこにもなく、十分に具象的な作品ではある。明らかに「テロが起きるイスラエル」が作品の基盤にあることがわかる『ストロベリー〜』に比べれば、抽象的という程度である。


とにかく、いいダンスが見れてよかった。